他人と関わらない孤独な生き方
「人に迷惑」を異常に恐れる日本人の病理
親が子育てにおいて追い込まれてしまい、その結果、虐待や殺人事件などが引き起こされてしまう報道を眼にすることが多くなっている気がします。親のわがままな育児放棄によるものもありますが、子どものことを真剣に考え、その育児の一環の中で起きてしまう事例が後を絶ちません。引きこもりの子どもの将来、子どもの家庭内暴力などさまざまな理由はあるのでしょうが、その原因に日本人のある病理が指摘されています。現代社会においての生活環境の変化がもたらしたともいえるこの状況を考えてみたいと思います。
「人に迷惑」という感覚
「人に迷惑をかけてはいけない」という言葉を親や教師などから聞いたことはあるでしょうか。お互いに気持ちよく生きていくために、相手のことを思いやり、自分の行動によって迷惑をかけないようにしようというものです。自分自身の行動によって、相手に迷惑をかけるということの意味は、故意や悪意によって相手を困らせてはいけないということで、お互いに助け合い、頼りあうことをやめるべきだということではないと思います。
現代の社会は近所づきあいなども減る傾向にあり、お互いがどのような人なのかさえわからないという社会環境となりつつあります。そのような社会の中では、一度抱えてしまった悩みを相談したり、会話などの気分転換などによって解消したりすることが難しくなっているように感じます。
誰にも相談することができない、「人に迷惑」をかけてはいけないという強い意識は、自分自身の中にある悩みを増長させ、絶望へと向かってしまう原動力になりえるのです。
相互依存の社会、甘えの重要性
現代の人々は甘えることが下手になってきていると思います。自分自身の甘えを聞いてもらうこともあれば、相手の甘えを聞いてやることもあるというのが人付き合いの基本なのではないでしょうか。甘えの中に相手の心や本質などが現れます。わがままな甘えもありますが、個人では解決できないことへの協力をしてもらうような甘えもあります。
お互いに相互扶助的な感覚で、助け合うことで結びつきが強くなるでしょう。もちろん、悩みの相談をお互いに共有することもできます。
ところが、現代社会において人々は甘えることが下手になってきているという指摘もあります。甘えることが下手というよりも、甘えることは人に迷惑をかけることになるため、それを避けているという感覚なのかもしれません。
また、お互いのかかわり、他人同士のかかわりをできるだけなくし、わずらわしい人間づきあいをなくしたいという意識も感じられます。
少子高齢社会への突入や、人口減少などの多くの問題を抱える日本の未来。ここからは相互扶助的な人付き合いをすすめていかなければならない環境になっていくと思います。生涯独身という人も増えており、孤独な老人が増えていくとしたら・・・。
子育ての悩みだけではなく、あらゆるところで相互扶助を意識した甘えの意識を社会全体で共有し、気軽に相談できる環境づくりをすすめていかなければならないと感じます。